ホームページを作ろうと思って調べ始めると、最初にぶつかるのが「ペライチで十分?それともマルチページ?WordPress も検討すべき?」という選択肢の多さです。本記事では3つの方式の本質的な違いを整理し、目的・業種・予算・運用負荷の4軸で「自社にとっての正解」を導き出す判断基準を、実例を交えて解説します。
はじめに:3方式は何が違うのか
「ペライチ」「マルチページ」「WordPress」は、しばしば横並びで語られますが、実は分類軸が異なる用語です。最初にここを整理しないと、見積りを取っても比較できません。
ペライチとマルチページは「ページ数の構造」を指す言葉です。1枚のHTMLに全部詰め込むのがペライチ(シングルページ)、トップ・会社案内・サービス・お問い合わせのように複数ページに分けるのがマルチページです。一方 WordPress は「制作・運用の仕組み」を指す言葉で、ペライチ構造でもマルチページ構造でも作れます。つまり WordPress は「ペライチ/マルチページ」のレイヤーが1つ上です。
本記事では現場で頻出する以下の3パターンを比較対象とします。
- ペライチ型:1ページ完結。静的HTML、または peraichi.com のようなノーコードツールで制作
- マルチページ型:5〜15ページ前後の構成。静的HTML/コーディング納品が中心
- WordPress型:CMSで構築し、ブログ更新やお知らせ追加を管理画面から行える形
なお「ペライチ」という言葉自体は、株式会社ペライチが運営する制作サービスの商標でもありますが、業界では「1ページ完結のサイト全般」の通称として定着しています。本記事では一般名詞として用います。
ペライチ(シングルページ)とは
ペライチ型サイトは、訪問者がスクロールするだけで「サービス紹介」「料金」「お客様の声」「お問い合わせ」まで一気通貫で読める構造のサイトです。LP(ランディングページ)と呼ばれることもあり、広告流入や1点集中の集客に特化しています。
特徴
- 1ページ完結。離脱ポイントが少ない
- スクロール途中で「予約する」「資料請求」のCTAを何度も差し込める
- 制作期間が短く、初期費用も抑えやすい
- ストーリー設計の巧拙が成果に直結する
メリット
- 制作スピードが速い:構成が単純なので、ヒアリングから2〜3週間で公開できるケースが多い
- 費用が安い:5〜15万円程度から制作可能。広告と組み合わせて回収しやすい
- コンバージョン率が高い:他ページへの遷移がないため、申込・予約・問い合わせまでの導線が短い
- スマホで読みやすい:縦スクロール前提なので、スマホUXと相性が良い
デメリット
- SEOで広範囲に拾えない:「地域名+業種」「サービス名」程度しか上位を狙えず、長尾キーワードでの流入は弱い
- 情報を載せきれない:会社の沿革、代表挨拶、ニュース、複数サービスを並列に持つと一気に冗長化する
- 会社の信頼感は出にくい:「会社概要」「採用情報」が独立していない構成は、上場企業や大口取引先の与信判断で減点要素になる
- ブログ運用と相性が悪い:1ページ構造の中に記事一覧を入れ込むのは破綻しやすい
向く業種・シーン
単一サービスの集客に振り切れる業態と相性が良いです。具体的には、歯科医院・接骨院・整骨院・美容室・サロン・カフェ・士業の初回相談LP・セミナー集客・キャンペーンページなど。「予約してもらう」「電話してもらう」「来店してもらう」のいずれか1つにゴールを絞れる場合は、まずペライチで始めて広告と回して反応を見るのが合理的です。
マルチページとは
マルチページ型は、トップページから「会社案内」「サービス一覧」「導入事例」「採用情報」「お問い合わせ」などを独立した複数ページに分けて構築するサイトです。一般的に中小企業のコーポレートサイトと言えばこの形を指します。
特徴
- ページごとにテーマが分かれており、目的別の動線設計がしやすい
- 各ページが個別にURLを持つため、検索流入の入口が増える
- 会社案内・採用情報など、与信や応募に必要な情報を独立して整備できる
- WordPress を使わず静的HTMLで構築すれば、表示速度とセキュリティが極めて高水準
メリット
- SEOで広く拾える:サービス別ページ、業界別ページ、地域別ページなど、検索意図ごとにページを用意できる
- 信頼感・与信に強い:取引先・銀行・採用候補者が見たときに「ちゃんとした会社」という印象を持たれやすい
- 表示速度が出しやすい:静的HTMLでマルチページを組めば、Core Web Vitals でも高スコアを取りやすい
- セキュリティ事故が起きにくい:CMSを使わなければ、ログイン画面そのものが存在しない
デメリット
- 初期費用が上がる:ページ数が増える分、デザイン・コーディング工数が比例して増える
- 自分で更新しづらい:静的HTML納品の場合、テキスト1行の修正にも制作会社への依頼が必要になることがある
- 制作期間が長い:標準的な10ページ前後で1〜2ヶ月かかる
- 放置されると古びる:ニュースやブログを載せていないと、何年も同じ内容のまま放置されがち
向く業種・シーン
中小製造業、士業、医療法人、建設業、商社、BtoB企業のコーポレートサイト。「複数サービスを並列に持っている」「会社の沿革・採用・IRなど面で見せたい情報が多い」「ブログ更新は必須ではない」業態に最適です。当社のサンプルでも、中小製造業向けにマルチページ14ページ構成の事例を公開しています。
WordPress(CMS型)とは
WordPress は世界のWebサイトの約4割が採用しているオープンソースのCMS(コンテンツマネジメントシステム)です。一度構築すれば、ブログ記事や事例、お知らせを管理画面からテキストエディタ感覚で追加・編集できます。
特徴
- 管理画面から記事・お知らせ・スタッフ紹介などを追加できる
- テーマとプラグインで機能拡張が容易
- ペライチ構造でもマルチページ構造でも構築できる
- サーバー側で動的にHTMLを生成するため、保守・セキュリティ対応が継続的に必要
メリット
- 自分で記事更新できる:ブログ・お知らせ・事例追加が制作会社を介さずに行える
- SEO資産が積み上がる:継続的に記事を出すほど、検索流入のキーワードが増える
- 機能拡張が早い:予約フォーム、会員機能、多言語、ECなど、プラグインで実装できる範囲が広い
- 制作者を切り替えやすい:WordPress の構造は標準化されているため、引き継ぎが効きやすい
デメリット
- セキュリティ対応が必須:本体・プラグインの脆弱性対応を怠ると改ざん・乗っ取り被害が起きる
- 保守費用が継続的にかかる:月3,000円〜数万円の保守契約が事実上必須
- 表示速度が出にくい:プラグインを増やすほど重くなり、Core Web Vitals が悪化しやすい
- 運用しないと持ち腐れ:「自分で更新できる」前提で導入しても、更新されないまま塩漬けになるケースが非常に多い
向く業種・シーン
記事や事例を継続的に出していくオウンドメディア、採用広報を重視する企業、士業の判例解説ブログ、スクール・教室の生徒事例、ECに展開予定のブランドサイトなど。「自社に更新できる人がいる」「外注でも記事制作の予算を確保できる」「SEO流入を本気で取りに行く」場合のみ真価を発揮します。
10項目で並べる比較表
主観を排し、3方式を10項目で並べたものが下表です(中小企業向けの一般的なケースを想定)。
| 項目 | ペライチ | マルチページ | WordPress |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | 5〜15万円 | 20〜60万円 | 30〜80万円 |
| 制作期間 | 2〜3週間 | 1〜2ヶ月 | 1.5〜3ヶ月 |
| SEO適性 | △(狭く深く) | ◯(広く取れる) | ◎(記事を出せば優位) |
| 運用コスト | 低(保守ほぼ不要) | 低〜中 | 中〜高(保守必須) |
| 自分で更新 | △(軽微なら可) | ×(依頼が必要) | ◎(管理画面で可) |
| セキュリティ | ◎(静的なら最高水準) | ◎(静的なら最高水準) | △(対応継続必須) |
| 表示速度 | ◎ | ◎ | △〜◯ |
| カスタマイズ性 | ◯(構造はシンプル) | ◎(自由設計) | ◯(テーマ依存) |
| 拡張性 | △(拡張は別途) | ◯(ページ追加可) | ◎(プラグインで広く) |
| 向く業種 | サービス1点集中型 | 中小企業全般・士業・製造業 | メディア・採用広報・EC予備軍 |
金額レンジは「コーディング納品+デザイン込み」を想定した一般的な相場感です。テンプレ流用、ノーコードツール利用、フルカスタムの度合いで上下します。詳細はホームページ制作費用ガイド2026も参照ください。
目的別おすすめ
「自社のゴール」から逆算すると、選ぶべき方式は概ね決まります。
サービス1点集中の集客/広告運用とセットで回したい → ペライチ
予約・申込・電話などコンバージョンが1つに集約できるなら、まずペライチで作り、Google広告/Meta広告で流入させて反応を見るのが最速です。改善サイクルも1ページなので回しやすい。初期費用を抑えて広告予算に回しましょう。
中小企業として信頼感を持たせたい/取引先・採用候補者に見られたい → マルチページ
「会社案内」「事業内容」「採用情報」「お問い合わせ」が独立した形は、見る側に安心感を与えます。継続的な記事更新を予定していないなら、静的HTMLによるマルチページが費用対効果が最も高い選択肢です。表示速度・セキュリティ・運用コストすべての面で安定します。
記事更新・SEO・採用広報を継続的にやる → WordPress
自社内に書ける人がいる、もしくは記事制作の予算を月数万円確保できる場合のみ、WordPress の真価が出ます。「いつか更新するかも」程度の動機で導入すると、保守費用だけが垂れ流しになります。
業種別おすすめ
現場でよく相談を受ける業種について、当社の推奨パターンを並べます。
歯科・接骨院/整骨院 → マルチページ または ペライチ
初診の動機が「症状+地名」で検索する単発ユーザー中心なら、ペライチで予約フォームに直結させるのが最も効率的です。一方で、医療機関としての信頼感、診療科目の網羅性、スタッフ紹介、料金表、症例ブログなどを面で見せたい場合はマルチページが向きます。当社の歯科医院サンプル(親しみ版)、同(高級版)、接骨院サンプルを参考にしてください。
美容室・ヘアサロン → 写真主導ペライチ または マルチページ
予約導線が命なので、写真ファースト+ホットペッパー連携の前提でペライチが効きます。スタイリスト指名文化が強いサロンや、複数店舗を展開している場合はマルチページが必要です。美容室サンプル「サロン・ルミエール」がペライチ寄りの参考形です。
中小製造業 → マルチページ
取引先の購買担当者・新卒採用候補者・銀行担当者など、複数のステークホルダーが訪問します。「事業内容」「製品ラインナップ」「品質保証体制」「会社沿革」「採用情報」を独立ページで展開する必要があり、マルチページが必須です。サンプル精密株式会社(マルチページ14ページ構成)を参考にしてください。
飲食店・カフェ → ペライチ または マルチページ
個人店・1店舗ならペライチで十分です。営業時間・メニュー写真・アクセス・予約電話を1画面に収めれば、訪問者が知りたい情報はほぼ満たせます。複数店舗、フードメニューが20種類以上、宴会プランやウェディング対応がある場合はマルチページに切り替える判断基準になります。カフェ・キノヘがペライチ寄りの参考形です。
士業(弁護士・税理士・司法書士・行政書士) → マルチページ
業務分野ごとに独立したページを持ち、それぞれで検索流入を取りに行くのが定石です。「相続」「離婚」「企業法務」「労務」など、サービス別ページがそのまま検索流入の入口になります。判例解説や法改正ブログを継続的に出す方針なら WordPress 化を検討してください。サンプル法律事務所を参考にどうぞ。
物販 → ECシステム(Shopify/BASE/STORES/カラーミー等)
商品販売が主目的なら、ペライチ/マルチページ/WordPress いずれも最適解ではありません。決済・在庫管理・配送・顧客管理が一体になった専用ECプラットフォームを選ぶべきです。ブランド世界観を強く出したい場合のみ、Shopify+カスタムテーマやヘッドレスEC構成を検討します。EC ブランドサイトサンプル「灯火 TOMOSHIBI」が編集デザイン寄りの参考形です。
判断フローチャート
迷ったときは以下の順序で自問してみてください。
このフローは「迷ったときの第一推奨」を出すための補助ツールです。実際の判断では、業界の慣習、競合の構成、社内リソース、3年後の事業計画なども踏まえる必要があります。
関連サンプル・関連コラム
本記事で言及した制作サンプルと、合わせて読みたいコラムをまとめました。
ペライチ系サンプル
マルチページ系サンプル
関連コラム
まとめ
「ペライチ vs マルチページ vs WordPress」は、本質的には「自社のゴールが1点に集約できるか」「自分で更新する体制があるか」「会社の顔として与信が必要か」の3問で大半が決まります。
個人事業主のサービス集客なら、まずペライチで広告を回して反応を見る。中小企業のコーポレートサイトとして与信が必要なら、静的HTMLによるマルチページが費用対効果が最も高い。記事更新やSEO流入を継続的に取りに行く体制が組めるなら、WordPress を検討する。この順序で考えれば判断を大きく外しません。
当社では、ヒアリング段階で「本当にWordPressが必要か/ペライチで十分か」を率直に提案しています。保守費用を払い続けて持ち腐れにするより、目的に合った最小構成で始めて、必要になったタイミングで拡張する方が合理的です。判断に迷ったら、まずは無料相談でお話しください。