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中小製造業のサイトリニューアルは、デザインの話から入ると 9 割うまくいかない。古い HTML を捨てて WordPress に差し替え、トップだけ綺麗にして公開、半年経っても問い合わせは増えず、リニューアル前と同じ電話 1 本/週で止まる — というパターンを何度も見てきました。逆に、最初に「現状サイトが何件の問い合わせを生んでいるか」を数値で押さえ、ターゲットを「既存取引先のリピートか、新規発注か、採用か」に分解してから着手したサイトは、公開 3 ヶ月で月 5〜10 件の新規引き合いを出します。本稿では、その差を生む 7 ステップを、外注に丸投げしないで進めるための判断材料として整理します。

はじめに — 製造業サイトでよく起きる典型課題

町工場・中小製造業の現行サイトを 50 社近く見てきた中で、刷新前に共通している症状は次の 5 つに集約されます。

この 5 症状が揃うと、Google からの流入は「会社名 + 採用」「会社名 + 評判」のような社名指名検索に偏り、肝心の「ステンレス 切削 短納期 大阪」のような購買担当の検索からは拾えません。リニューアルの目的は「見た目を今っぽくする」ではなく「拾えていない検索行動を拾える構造に変える」ことです。

ステップ 1 — 現状サイトの棚卸し(PV・問い合わせ数・直帰率)

制作会社に「リニューアルしたい」と言う前に、現行サイトの数字を出します。出ない場合はその事実自体が初期データになります。最低限押さえる 4 項目はこれです。

1-1. 月間 PV と流入経路

Google アナリティクスが入っていれば直近 3 ヶ月の平均 PV、入っていなければ Google Search Console を即日連携。流入の内訳を「指名検索(会社名)」「一般検索(加工キーワード)」「直接(URL 直打ち / 名刺)」「リファラル(取引先サイトからのリンク)」の 4 つに分けます。一般検索が 1 割未満なら、サイトは新規開拓に効いていません。

1-2. 問い合わせ件数とその出所

過去 6 ヶ月のフォーム送信数 + 代表電話の「HP を見て」と言われた件数を合算。多くの町工場でこの数字は月 0〜2 件です。0 件なら、現状サイトは名刺がわりにしか機能していないと割り切って良い。

1-3. 直帰率とランディングページ別の滞在時間

直帰率が 80% を超える、平均滞在時間が 30 秒未満のページは、検索意図と中身がズレています。「採用」で来ているのに採用ページが無い、「設備」で来ているのに設備一覧が PDF リンクだけ、というケースが大半。リニューアル時にどのページを厚くするかの判断材料になります。

1-4. モバイル比率と表示速度

2026 年現在、製造業 BtoB でもモバイル流入は 5〜6 割。Lighthouse でモバイル LCP(最大コンテンツ表示時間)と CLS(レイアウトずれ)を測り、LCP 4 秒超なら表示速度の改善は必須項目です。

CHECK

この 4 項目を A4 1 枚に書き出してから制作会社と話を始めると、見積依頼の解像度が一段上がります。「とりあえずカッコよく」では予算が膨らみがちですが、「PV 月 800・問い合わせ 1 件・直帰率 88% を、PV 月 1,500・問い合わせ 5 件・直帰率 70% にしたい」と書ければ、どこに予算を寄せるかが自然に決まります。

ステップ 2 — ターゲット明確化(取引先 / 新規発注 / 採用)

製造業の HP を訪れる人は、目的の違う 3 種類に分かれます。それぞれが見たい情報も判断軸も違うので、ターゲット配分を先に決めておかないと、ページ構成も写真もコピーも中途半端になります。

ターゲット来訪目的判断軸
既存取引先担当者の連絡先確認・会社概要の社内共有会社規模・財務体力・連絡先の更新状況
新規発注検討中の企業「この加工頼めるか」「ロット 1 個から対応か」取扱材料・設備・精度値・対応納期・所在地
求職者・学校「働く環境」「機械の世代」「待遇」機械の世代、平均年齢、年収レンジ、福利厚生

多くの中小製造業では、新規発注 6:採用 3:既存取引先 1 くらいの配分が現実的です。既存取引先向けの情報(会社概要・代表挨拶・沿革)は重要ですが、トップから 1 クリックで到達できれば十分。トップ上部のファーストビューは新規発注向け、グローバルナビの目立つ位置に採用、フッターに会社概要、という優先順位で組むと迷いません。

逆にやりがちな失敗は、社長挨拶と沿革をトップの真ん中に大きく置いてしまうケース。社内には喜ばれますが、購買担当はそこを読みません。

ステップ 3 — 必須ページ構成と「なぜそのページが要るか」

中小製造業のサイトに最低限欲しいページは、トップを含めて 10〜14 枚。各ページの「役割」を一言で説明できないなら、そのページは作らない方が良い。

トップ

役割は「3 秒で何屋か分からせる」。ファーストビューに「精密切削加工|京都・滋賀・大阪エリア対応・図面 1 枚から見積」のような一文と、図面相談ボタンを置きます。スライダーで会社理念を流すのは時間の無駄。

事業 / サービス

役割は「自社が請けられる仕事の範囲を購買担当に伝える」。トップから 1 ページの「サービス一覧」、その下に切削・板金・組立など加工種別ごとの詳細ページを 3〜5 枚ぶら下げます。サービス一覧に全部書き込むより、加工別に分割した方が検索エンジンが「これは切削ページ」「これは板金ページ」と認識しやすい。

設備

役割は「数字で『やれる仕事』を示す」。マシニング・旋盤・板金機・検査機を機種名(DMG MORI、Mazak、AMADA など)と最大ワークサイズ・繰り返し精度・保有台数で並べます。文章で語るより表 1 枚の方が伝わる。

品質

役割は「不良率と検査体制で安心させる」。ISO 9001 取得状況、検査設備(三次元測定機・粗さ計)、検査成績書発行可否、社内不良率の推移グラフ。BtoB 製造業では品質ページの厚さが信頼に直結します。

導入事例 / 実績

役割は「自分の案件と似た事例で『頼めそう』と思わせる」。一覧 + 個別事例 6〜10 件。1 件 600〜900 字、「業界・課題・要件・成果」の 4 項目で書きます。社名は出せなくても「半導体製造装置メーカー(売上 100 億円規模)」程度の表現で十分。

採用

役割は「媒体応募の前に押される確認サイト」。詳細はステップ 7 で扱いますが、独立ページとして必ず立てる。

会社概要 / アクセス

役割は「実在性と所在地の確認」。住所・電話・FAX・代表者・資本金・従業員数・取引銀行・主要取引先(公開可分だけ)・最寄り IC・駐車場有無まで。Google マップ埋め込みは必須。

お問い合わせ

役割は「図面ファイルを安全に受け取る」。ステップ 5 で詳述します。

このセットで合計 10〜14 ページ。お知らせや採用社員インタビューを足せば 18〜20 枚まで広がります。一気に揃えず、トップ・サービス・設備・お問い合わせの 4 ページから先行公開し、事例と採用を 3 ヶ月かけて追加するやり方が現実的です。

ステップ 4 — 写真撮影と AI 画像の使い分け

製造業サイトの写真は「ストックフォトの工場写真」で済ませると一発で見抜かれます。購買担当は同業他社のサイトを何十枚も並べて比較しているので、自社の機械が写っていないことに気付きます。とはいえ全カット撮影発注すると 1 日拘束 + 15〜30 万円。次の配分が現実的です。

用途取得方法枚数目安
トップヒーロー画像プロカメラマンの実写(半日撮影)1〜2 枚
機械・設備の個別カットプロカメラマンの実写(同日撮影)15〜25 枚
加工後ワークのアップ担当者がスマホで撮影 + Lightroom で軽く補正20〜40 枚
採用ページの「社員の声」プロカメラマンで人物のみ別撮影3〜6 枚
事例ページのイメージカットAI 画像生成(gpt-image-1 等)必要なだけ
会社外観・正面担当者撮影 or 一度の出張で撮影2〜3 枚

AI 画像が向くのは「半導体工場のクリーンルーム」「自動車生産ライン」のような自社では撮れない業界イメージ。事例ページのトップカット、ブログ記事のアイキャッチに使うと、写真の総枚数を抑えつつ統一感が出ます。逆に AI 画像で絶対やってはいけないのが「自社設備の代用」。架空の機械をトップに置くと、現場見学に来た客が「写真と違う」と感じて契約が止まります。

ステップ 5 — 図面添付フォームと問い合わせ設計

製造業サイトの「お問い合わせ」は、テキスト入力欄だけだと半分以上の見込み客を逃します。設計担当は図面を投げて「これ作れますか」と聞きたい。文章で形状説明させると、それだけで別の業者を当たられます。フォーム設計で押さえる 4 項目はこれです。

5-1. 対応ファイル形式と容量上限

2D(PDF / DXF / DWG)と 3D(STEP / STP / IGES)の両方、複数ファイル送付用に ZIP も受け付け。フォーム横に「対応形式:PDF / DXF / DWG / STEP / STP / IGES / ZIP」と必ず明記します。容量は 1 ファイル 20 MB が現実的な上限。組立図など 100 MB 級も来るので「上限を超える場合はメール、Google Drive、OneDrive の共有 URL でも送付可」という代替経路を案内文に明記。これが無いと容量超過で問い合わせが消えます。

5-2. NDA(秘密保持)の扱い

「お預かりした図面・添付ファイルは、見積作成・図面検討・契約手続きに必要な範囲でのみ利用し、第三者へ提供しません」とフォーム下部に明記。さらに「NDA 締結を希望する」のチェックボックスを置き、希望者には自社 NDA テンプレートを返信する運用に。試作開発・新製品の見積で、機密性を理由に外注先候補から外されるケースが減ります。

5-3. 問い合わせ種別の分岐

「見積依頼 / 量産前 VE 相談 / 試作 1 個から / 採用 / その他」を目的別ラジオで分岐。社内振り分けが楽になり、自動返信文も種別ごとに変えられます。

5-4. 返信目安の明示

「営業日 2 日以内にご返信いたします」とフォーム下に書く。返事が来ないと不安で他社にも投げられ、二股発注になります。

サーバー側は SSL 必須、添付ファイルの保存先は社内アクセス制限のあるストレージに限定。Google Workspace の Drive 共有でも、外部公開リンクを切っておけば運用は回ります。

ステップ 6 — SEO 対策(業界キーワードの具体例)

「製造業 SEO」と一般化して語っても効きません。検索されているのは具体的なキーワードの組み合わせです。実際の例で押さえます。

軸 1 — 加工種別 × 材料

サービス詳細ページのタイトルと h1 に「材料 + 加工種別」の組み合わせを入れると拾えます。「精密切削加工|ステンレス・アルミ・銅・チタン対応」のような書き方。

軸 2 — 地域 × 加工種別

会社所在地ページに住所を構造化データ(LocalBusiness)で書く、サービスページの h1 に地域名を入れる、アクセスページに最寄り IC・駅・所要時間を書く。Google ビジネスプロフィールと HP の住所表記を完全一致させる。これだけで地域検索の取りこぼしが減ります。

軸 3 — 業界 × 対応

業界別の実績ページを 4〜6 業界で立てると、業界キーワードの長尾流入が増えます。半導体・医療・食品・自動車・産業機械・航空宇宙のうち、自社が納めてきた業界に絞って実績件数の多い順に。

構造化データは Organization(法人番号・所在地・電話)、Service(提供サービスごとに serviceType と areaServed)、FAQPage(最小ロット・対応材料・NDA 締結可否などで 5〜8 問)の 3 種類を入れます。FAQPage は検索結果に Q&A が直接表示されてクリック率が上がります。

ステップ 7 — 採用ページの作り込み

「人が採れない」と嘆く町工場の HP に採用ページが無い、あっても 3 行しか書かれていない、というケースが本当に多い。求人媒体(Indeed、ハローワーク、エン転職)の応募ボタンを押す前に、求職者は必ず会社名で検索して HP を見ます。HP が古ければ応募確率は半分以下に落ちます。採用ページに最低限載せる項目はこれです。

このうち効くのは「機械の世代」と「先輩社員の声」と「想定年収レンジ」の 3 つ。最新機械が入っていれば技術志向の若手が、年収レンジを開示していれば現職に不満のある中堅が、声に親近感があれば未経験者が、それぞれ違う層に刺さります。3 ヶ月で 5〜10 件の応募がコンスタントに来るレベルを目標に作り込みます。

予算と期間の目安(業界相場の中身)

中小製造業の HP リニューアル相場は、規模と発注先で大きく変わります。代表的なレンジは次の通りです。

ページ数制作費レンジ期間目安発注先イメージ
5〜8 ページ(軽量リニューアル)30〜80 万円1〜2 ヶ月フリーランス / 小規模制作会社
10〜14 ページ(標準フル刷新)80〜200 万円2〜4 ヶ月中規模制作会社 / 当社
15〜20 ページ + 撮影込み200〜400 万円4〜6 ヶ月中〜大手制作会社
多言語 / CMS / 採用システム連携400 万円〜6 ヶ月〜大手制作会社

金額が大きく変わる要因は、写真撮影の有無(半日撮影で 15〜25 万円)、CMS(WordPress テーマカスタマイズか静的 HTML か)、多言語対応(英語追加で原稿翻訳と工数が 1.4 倍)、CRM 連携(HubSpot や Salesforce と問い合わせフォームを繋ぐかどうか)の 4 点です。中小製造業の標準的なゴールである「新規問い合わせ 月 5〜10 件」を出すには、10〜14 ページの標準フル刷新を 100〜150 万円の予算で組むのが費用対効果のスイートスポットです。

運用は月額制で別途。保守費用の相場は月 5,000〜30,000 円。SSL 更新、CMS セキュリティパッチ、バックアップ、軽微な文言修正、月次アクセスレポートが含まれる範囲です。当社の Web 保守は月 3,000 円から提供しています。

リニューアル失敗パターン 3 つ

失敗 1 — トップだけ綺麗にして満足する

制作会社が「まずはトップから」と言うのに従い、トップだけリッチに作り変えて公開、下層は旧 HTML のまま放置。検索エンジンが評価するのは下層ページの集合体なので、トップだけ作り変えても流入は増えません。事業・設備・品質・採用の中身まで全部書き直して初めて、3 ヶ月後の検索順位が動きます。

失敗 2 — デザインテンプレートの「製造業向け」を素材無しで埋める

WordPress テーマや Wix テンプレートの「製造業向け」を買って、自社の機械写真も実績も無いまま、サンプル写真とサンプル文章を社名だけ差し替えて公開。同じテンプレートを使った他社サイトと見分けがつかなくなり、Google から「コピー類似サイト」と判定されて検索順位が伸びません。テンプレートを使うなら、写真と本文を 7 割以上は差し替える前提で。

失敗 3 — 公開後の更新が止まる

リニューアル時の予算を全て制作費に振り、運用予算を確保しない。お知らせの最終更新が 2024 年 3 月で止まっているサイトは、購買担当から「この会社まだやってる?」と疑われます。月 1 件のお知らせ更新(受賞、新規導入機械、業界展示会出展、社員入社)を 12 ヶ月続けるだけで、サイトの「生きている感」は維持できます。月 1 件分の更新作業は外注しても 5,000〜10,000 円。これを削るとリニューアル費用が無駄になります。

まとめ — 着手前に答えを出しておきたい 5 つの問い

リニューアル外注先と最初の打ち合わせをする前に、次の 5 つに答えを出しておくと、要件のブレが大幅に減ります。

  1. 現状サイトの月間 PV・問い合わせ件数・直帰率は?
  2. 新規発注:採用:既存取引先の流入を、何:何:何で取りに行きたいか?
  3. 図面添付フォームを置いたとき、NDA を希望されたら社内で対応できる体制があるか?
  4. 採用ページに載せる「機械の世代・想定年収レンジ・先輩社員の声」を出せるか?
  5. 公開後の月次更新を、自社でやるか外注するか? 予算は?

この 5 つに答えが出ていれば、制作会社の提案を「これは自社の目的に合う/合わない」で選別できます。逆に答えが無いまま「いくらでできますか」と聞くと、見積金額と納期しか比較材料が残らず、結果として安いだけのテンプレートサイトに落ち着きます。

株式会社スマートマッチングでは、月 3 万円台からの Web 制作と月 3,000 円からの Web 保守で、中小製造業のサイトリニューアルを支援しています。図面添付フォーム・地域 SEO・採用ページの作り込み・公開後の月次更新まで一括で進められますので、リニューアルの初期相談から 無料相談フォーム でお気軽にどうぞ。

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